皆さんこんにちは。

HRマネジメント社会保険労務士事務所です。

全国的にも暖冬が続いており、仙台も比較的暖かい日が多い12月ですね。

息子は雪が降るのを楽しみに待っています。

今年のクリスマスは、ホワイトクリスマスになるでしょうか~。

さて、政府は12月13日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(厚生労働省の諮問機関)を開き、雇用保険制度の改正に向けて、改正案を公表しました。

今回はその内容を見ていきたいと思います。

 

【この記事を最後まで読んでわかること】

✓雇用保険制度の改正案の概要と実施時期

✓雇用保険制度の改正案の詳細

 

 

【改正見込の概要は、次のとおりです。】

施行見込時期 改正見込の項目 内容
(1) 令和10年度 雇用保険の適用拡大 所定労働時間が10時間以上の労働者まで拡大
(2) 令和6年度 教育訓練給付の拡充 特定一般:最大で受講費用の50%を支給

専門実践:最大で受講費用の80%を支給

(3) 令和7年度 教育訓練中の生活を支えるための給付と融資制度の創設 教育訓練休暇給付金を創設や教育訓練費用や生活費を対象とする融資制度を創設
(4) 令和7年度 自己都合離職者の給付制限の見直し 2ヶ月から1ヶ月へ短縮
(5) 令和7年度 育児休業給付の給付率引上げ 子の出生後一定期間内に、被保険者とその配偶者がともに一定期間以上の育児休業を取得した場合、産後パパ育休期間と同じ期間である 28 日間を限度に、休業開始前賃金の 80%相当額の給付を支給
(6) 令和7年度 育児時短就業給付の創設 2歳未満の子を養育する場合に時短勤務中の各月に支払われた賃金額の10%を支給
(7) 令和7年度 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数の特例等 令和7年度から2年間延長
(8) 令和7年度 就業促進給付の見直し 就業手当の廃止、就業促進定着手当の給付率を減額
(9) 令和10年度 雇用保険適用拡大に伴う被保険者期間の算定基準の見直し 離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が6日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が40 時間以上ある場合へと見直す
(10) 令和10年度 複数の事業所で雇用されている労働者(マルチジョブホルダー)への雇用保険の適用の見直し 主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者とすることとされているため、例えば賃金日額の高い方の事業所を主たる事業所とするなど、判断に当たっての基本的な考え方を施行までに明確化し、周知する
(11) 令和10年度 65 歳以上の労働者を対象に、2つの事業所での週所定労働時間がそれぞれ20 時間未満であって合算して20 時間以上となる労働者の雇用保険の適用の見直し 週所定労働時間 10 時間以上で雇用保険が適用されることとなることにあわせて、65 歳以上の労働者の適用の特例についても週所定労働時間の基準を見直す

 

【詳細についてみていきましょう。】

 

(1)雇用保険の適用拡大

【現状・課題】

  • 週の所定労働時間が20時間以上の労働者が雇用保険法の適用対象になる。
  • 雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、雇用のセーフティネットを拡げる必要がある。

【見直し内容】

  • 雇用保険の適用対象を週の所定労働時間が10時間以上の労働者まで拡大。(R4年度末時点の被保険者数は約4,457万人)※給付は別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様に、基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等を支給。
  • 被保険者期間の算定基準

 

 

(2)教育訓練給付の拡充

【現状・課題】

  • 厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合にその費用の一部を支給すること(教育訓練給付)を通じて、労働者の学び直し等を支援している。
  • 個人の主体的なリ・スキリング等への直接支援をより一層、強化、推進するとともに、その教育訓練の効果(賃金上昇や再就職等)を高めていく必要がある。

【見直し内容】

  • 専門実践教育訓練給付金(中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練講座を対象)について、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合には、現行の追加給付に加えて、更に受講費用の10%(合計80%)を追加で支給する。
  • 特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)について、資格取得し、就職等した場合には、受講費用の10%(合計50%)を追加で支給する。

 

 

(3)教育訓練中の生活を支えるための給付と融資制度の創設

【現状・課題】

  • 労働者が自発的に、教育訓練に専念するために仕事から離れる場合に、その訓練期間中の生活費を支援する仕組みがない。また、雇用保険の被保険者ではない者が、公共職業訓練等以外の教育訓練を自発的に受けるための費用や生活費を支援する仕組みがない。
  • 労働者の主体的な能力開発をより一層支援する観点からは、離職者等を含め、労働者が生活費等への不安なく教育訓練に専念できるようにする必要がある。

【見直し内容】

  • 雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金を創設する。
  • 雇用保険の被保険者ではない者を対象に、教育訓練費用や生活費を対象とする融資制度を創設する。

 

 

(4)自己都合離職者の給付制限の見直し

【現状・課題】

  • 正当な理由のない自己都合離職者に対しては、失業給付(基本手当)の受給に当たって、待期満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がある。※ただし、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合、給付制限が解除される。
  • 労働者が安心して再就職活動を行えるようにする観点等を踏まえ、給付制限期間を見直す必要がある。

【見直し内容】

  • 原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。ただし、5年間で3回以上の正当な理由のない自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヶ月とする。
  • 離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限を解除。

 

 

(5)育児休業給付の給付率引上げ

【現状・課題】

  • 育児休業を取得した場合、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%が支給。
  • 若者世代が、希望どおり、結婚、妊娠・出産、子育てを選択できるようにしていくため、夫婦ともに働き、育児を行う「共働き・共育て」を推進する必要があり、特に男性の育児休業取得の更なる促進が求められる。

【見直し内容】

子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げることとする。※配偶者が専業主婦の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる。

 

 

(6)育児時短就業給付の創設

【現状・課題】

  • 現状では、育児のための短時間勤務制度を選択し、賃金が低下した労働者に対して給付する制度はない。
  • 「共働き・共育て」の推進や、子の出生・育児休業後の労働者の育児とキャリア形成の両立支援の観点から、柔軟な働き方として、時短勤務制度を選択できるようにすることが求められる。

【見直し内容】

  • 被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時間勤務をしている場合の新たな給付として、育児時短就業給付を創設。
  • 給付率については、休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間での勤務することを推進する観点から、時短勤務中に支払われた賃金額の10%とする。

 

 

(7)雇止めによる離職者の基本手当の給付日数の特例等~令和6年度末までの暫定措置

【現状・課題】

  • 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付(雇用機会が不足する地域における給付日数の延長)、教育訓練支援給付金(45才未満の者に基本手当の80%を訓練受講中に支給)は、令和6年度末までの暫定措置とされている。
  • 暫定措置の在り方について、検討する必要がある。

【見直し内容】

  • 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付を2年間延長する。
  • 教育訓練支援給付金の給付率を基本手当の60%とした上で、2年間延長する

 

 

(8)就業促進給付の見直し

【現状・課題】

  • 安定した職業以外の職業に早期再就職した場合の手当として就業手当が、早期再就職し、離職前の賃金から再就職後賃金が低下していた場合に低下した賃金の6か月分を支給する手当として就業促進定着手当が設けられている。
  • 支給実績や人手不足の状況等を踏まえた各手当の在り方について、検討する必要がある。

【見直し内容】

  • 就業手当を廃止するとともに、就業促進定着手当の上限を支給残日数の20%に引き下げる。

 

 

(9)雇用保険適用拡大に伴う被保険者期間の算定基準の見直し

【現状・課題】

  • 失業等給付の受給資格の判定の基礎となる被保険者期間については、現行のとおり、離職日から2年間に被保険者期間が 12 箇月以上(特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、1年間に6箇月以上)とすべきである。
  • 1箇月として被保険者期間に算入されるための基準については、現行の「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が 11 日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が80 時間以上ある場合」を1箇月として被保険者期間に算入する。

【見直し内容】

  • 1箇月として被保険者期間に算入されるための基準については、「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が6日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が40 時間以上ある場合」を1箇月として被保険者期間に算入する。

 

 

(10)複数の事業所で雇用されている労働者(マルチジョブホルダー)への雇用保険の適用の見直し

【現状・課題】

  • 複数の事業主との間で雇用保険の適用基準を満たす場合には、主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者とすることとされている。

【見直し内容】

  • 適用の範囲を週所定労働時間10 時間以上に拡大することに伴い、複数の雇用主との関係で被保険者要件を満たすケースが増加することが想定されることから、現場における取扱いに混乱が生じることのないよう、例えば賃金日額の高い方の事業所を主たる事業所とするなど、判断に当たっての基本的な考え方を施行までに明確化し、周知すべきである。

 

 

(11)65 歳以上の労働者を対象に、2つの事業所での週所定労働時間がそれぞれ20 時間未満であって合算して20 時間以上となる労働者の雇用保険の適用の見直し

【現状・課題】

  • 合算して20 時間以上となる場合に本人の申出を起点として雇用保険を適用する

【見直し内容】

  • 週所定労働時間 10 時間以上で雇用保険が適用されることとなることにあわせて、この 65 歳以上の労働者の適用の特例についても週所定労働時間の基準を見直すとともに、適用拡大の施行前にこの特例の適用を受け始めた労働者が不利とならないよう、所要の経過措置を設けるべきである。

 

 

【まとめ】

急速な少子化が進展する中で、男女ともに働きながら育児を担うことができる環境の整備に向けて、特に男性の育児休業の取得促進や、育児期を通じた柔軟な働き方の推進、労働者の主体的なキャリア形成を支援することが求められているとして、経済財政運営と改革の基本方針」(令和5年6月16 日閣議決定)や「こども未来戦略方針」(令和5年6月13 日閣議決定)等において、上記の改正見込の内容が盛り込まれていました。

特に、雇用保険制度の適用拡大は、新たに加入することとなる労働者の抽出から始まり、労働者へ雇用保険制度や雇用保険に加入する旨の説明、ハローワークへの届出等の事業主の事務負担が伴います。また、週所定労働時間10時間以上から雇用保険に加入することに伴い、育児休業給付の申請をする労働者の数も増えることが想定されます。

 

私たちHRマネジメント社労士事務所では、雇用保険制度の改正内容をお届けするだけでなく、実際に起こりうる問題を一緒に考え、その解決策をご提案させて頂きます。また、労務管理がスムーズになる社内体制や手続きフローなども一緒に「考え・ご提案し・サポート」させて頂きます。総合的にサポートさせて頂きますので、お気軽にご相談くださいませ。

 

📧 info@hrmng.jp

 

【参照元】

厚生労働省、労働政策審議会(職業安定分科会雇用保険部会)第189回

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126980_00007.html